企業にとって人材の確保は至上の命題ではありますが、全員が即戦力になるかと言えば、答えはNoです。誰もが最初は未経験であり、半人前どころか、業務を教える手間を考えればマイナスにだってなり得ます。
そんな彼らを育てる場として用意されているのが、新人研修です。現場に出る前に最低限の知識を身に着けてもらい、少しでも活躍できるようになってもらおう、という戦略ですね。
しかしそれも、誰が教えるのか? という問題が残ります。
多くの場合、研修を専門にビジネスとしている業者に頼むか、社員が講師を務めるかという2つの選択肢がありますが、それぞれのメリット・デメリットにはどんなものがあるのでしょうか。
そのいくつかの特徴についてまとめました。
外部業者に委託する場合のメリット
教育のプロにお願いできる
SEは専門性の高い技術職であるため、未経験の人ほど理解するのは困難です。どんなに参考書を読み込んでも内容が頭に入ってこない、ということも珍しくありません。
だからこそ、教え方の上手さは何よりも大切なポイントです。
外部委託の場合はプロの講師にお願いできるので、その点は確実に保証できることでしょう。
研修計画も任せられる
新人研修は「コレだけ教えておけば良い」と言った単純なものではありません。色々な内容を、順序良く教えていかなければ、知識として身に着けさせるのは難しいでしょう。
そのため、研修全体のスケジュールが必要になります。現場に送り出す日から逆算し、いつまでに何をどこまで教える、という計画を立てなければなりません。
自社の社員にお願いする場合、非常に負担が大きくなりますので、これを外部に委託できるのは有難いことです。
教わる内容の汎用性の高さ
自社の業務とは関係がない、完全に外部の講師による講義ですので、その内容には無駄がありません。自社内だけの独自ルールのようなものに惑わされることなく、どこに行っても通用する、汎用性の高い内容を教わることができます。
外部業者に委託する場合のデメリット
コストが高い
外部業者に委託する場合、真っ先に挙げられるデメリットが、コストの高さです。1コマいくらと細かく計算されており、長期間の研修ともなれば、そのコストは膨大なものになります。もちろん、専門性の高い内容になればなるほど、更に金額が嵩んでいくことになるため、資金に余裕のない中小企業では、難しいかも知れません。
自社ルールは配属後に教える
どの企業でも必ず、コーディング規約などの、開発における「独自ルール」がというものが存在します。これは絶対に遵守しなければならないルールではありますが、講師は外部の人であるため、そういった内容までは教えることができません。
時には講師が言うルールと自社ルールの間で矛盾することもあるので、現場配属後、改めてその辺りを教えてあげる必要があります。
日程変更が難しい
研修を依頼する場合、「何日から何日まで」と明確に期間を指定することになります。そのため急な日程変更は難しく、例えば新型コロナの流行と言った事態があっても、簡単に延期することはできません。
予定通りに研修を行えなかった場合に備え、副案を用意しておいた方が良いでしょう。
社員が講師を務める場合のメリット
プレゼンテーション能力の向上
SEにとって、パソコンに向かって開発するばかりが仕事ではありません。時にはユーザーとの打ち合わせの場に立ち、要件を詰めていくこともあります。
その時必須となるのが、プレゼンテーション能力です。しかし普段の業務の中で身に着けるのは難しく、分かりやすく説明できるようになるには慣れが必要ですよね。
そんな社員にとって、新人研修は、大勢の前で話す練習として最適の場だと言えるでしょう。
部下に対するコミュニケーション
社員に講師をお願いした場合のメリットの一つに、新人たちとの距離の近さが挙げられます。業務の場で接するよりも「誰がどのくらいの能力があるのか」「どんな性格の人なのか」という点を理解しやすいため、最初のコミュニケーションもスムーズに行えます。
またその他にも、自分の組織の一員だということも強く意識できるため、部下に対する責任感を育てる効果も期待できるんです。
事業内容をもとした実体験を教えることができる
研修の場においての難点は、机上の勉強であり、全てが現場で役立つ知識ではないという点です。そのため教えた内容は上滑りしやすく、即戦力にまで育てることは非常に困難だと言わざるを得ません。
対策として効果的なのは、現場での実体験を一緒に語ることです。
堅苦しいだけ勉強でも、「こういうコーディングをするとこんな困ったことがあった」「こんな不具合が発生した」という経験談が加わることで実感を伴わせることができ、知識の吸収の一助とすることができるでしょう。
社員が講師を務める場合のデメリット
社員の負担が大きい
研修はそれ自体がビジネスとなるほど難しく、大変なものです。
教育スケジュールの立案から始まり、環境構築、資料の準備など、やるべきことは無数に存在します。業務の合間にできるようなものではありませんが、それでもプロジェクトの進捗次第では、已む無く残業して頑張るしかなくなります。
このように、研修の講師は社員の負担が非常に大きいため、管理者側が業務とのバランスを取れるよう、しっかりと努めなければなりません。
教え方の良し悪しがある
「外部委託する際のメリット」にも記載しましたが、初心者にとってSEの仕事は非常に難解であるため、「講師の教え方」は重要なポイントの一つになります。
ですが、急に一般社員が講師を務めることになっても、その全員が上手く教えられるかと言えば、そんなはずがありませんよね。中には独り善がりな教え方しかできず、新人たちを混乱させてしまう人もいることでしょう。
対策として挙げられるのは、なるべく講師の数を増やし、分担する方法です。人数が増えれば、その分全体の教え方のレベルも平均化されるため、新人たちが困ることも少なくなります。
オススメは、要所での切り分け
外部委託と自社講師、どちらも大きなメリット・デメリットがあるのはご理解頂けたでしょうか。
特にその中でも深刻なのは、やはり外部委託におけるコスト面での負担でしょう。資金に余裕がある大企業でも、研修の全てを業者に任せるのは難しいかと思われます。
オススメなのは、その両方の方法の併用です。
基本的には自社の社員に講師をお願いし、高度な内容を教える際など、要所要所で外部委託を行えば、どちらのメリットも享受しやすいはずです。
無理なく高いクオリティの研修計画を立て、一刻も早く新人を戦力へと育てられるよう、社員一丸となって頑張っていきましょう。