2019年12月、中国の武漢市で確認された新型コロナウイルスは、僅か数ヶ月の間にパンデミックと言われるほどの勢いで世界中に蔓延しました。その影響は非常に大きく、多くの国でロックダウンが行われるなど、厳戒態勢が取られてきました。
しかし最近では、感染対策が一般化したことや、国民のほとんどがワクチンを接種し終えたことによって、少しずつ元の生活を取り戻すことが出来始めました。感染者数を見ると、まだまだ楽観視出来る状態ではありませんが、ひとまずピークは抜けた、という意見が一般的です。
ですがコロナの前後で変わったのは、日常生活ばかりではありません。仕事を進める上でも、様々なところで大きな変化がありましたよね。今回は、そんなコロナ前後によってどんな変化があったのか、その影響について解説していきましょう。
企業訪問・出張
まず真っ先に影響を受けたのは、企業への訪問や出張です。SEの仕事はコーディングやデバッグ作業ばかりではなく、要件定義や設計の工程では、密にクライアントと連携を取る必要があります。これまでそうした作業は、クライアントのところへ足を運んで打ち合わせをしていた企業が多かったのですが、新型コロナウイルスの蔓延により、可能な限り人との対面を避けなくてはならなくなりました。
そこで積極的に利用されるようになったのが、ZoomやTeamsを利用したオンライン会議です。
これまで多くの企業で対面での打ち合わせが求められてきましたが、やってみればオンラインでも問題なく仕事は進み、今では主流としている企業も多くなってきています。また、オンライン化されたのは打ち合わせだけではありません。セキュリティに抵触しない限りという条件付きですが、納品作業もリモートで行われるようなったケースも一般的になってきたようです。
営業・契約のデジタル化
企業訪問が出来なくなったことにより、真っ先に影響を受けたのは営業チームではないでしょうか。
オンライン会議は非常に便利なシステムですが、とは言え企画・提案段階であれば、少しでもコミュニケーション量を増やせる対面を望む方も多くいらっしゃいます。またそれだけではなく、名刺交換や、契約の締結などもこれまでは対面でこそ行われていたことでしょう。
しかし、近年ではこれらも全てデジタル化が進んでいます。多くのアプリで相互利用出来る名刺交換ソフトや、電子印、電子契約など、今の世の中に対応したシステムがどんどんと生まれてきているのです。
リモートワーク
新型コロナウイルスの蔓延に合わせて、政府から「出勤の7割削減」という目標が掲げられました。これはやろうと思ってすぐ達成出来る目標ではありませんが、コンピューターをメインで扱うSEは、比較的それを実現しやすい職種と言えるでしょう。
ですがこの時心配なのは、セキュリティに関する問題です。
業務システムを開発するためには、企業や社員の情報をデータで頂かなければなりませんが、そうした情報の大半は社外秘です。そのためこれまでは「業務に関する資料は持ち帰り禁止」といったルールを徹底していましたが、リモートワークはそれと真っ向から対立する、矛盾した制度でもあるわけです。
この制度を採用するために、企業は新しくリモートワーク用のルールを策定しました。機密データは作業用のPCを直接自宅に持ち帰らず、リモート用に支給したPCからオフィスに置かれたPCにVPNで接続し、情報漏えいのリスクを可能な限り下げる方法が一般的なようです。
ワクチン接種による仕事への影響
世界的に見ると後発組ではありましたが、日本でも安定的にワクチンを接種出来るようになりました。これさえあれば安心安全!というほどではありませんが、公私ともに、圧倒的に生活を送りやすくなったのもまた事実です。
ですがこのワクチンは、副反応が辛いことでも有名です。接種後、半日から1日、人によっては2、3日寝込んでしまうケースも珍しくありません。と言ってワクチン接種を怠ると、肝心のリリース時に客先訪問を断られる可能性があるので、後回しにも出来ないのが辛いところです。
打ち合わせの日程や開発納期、リリース日など、仕事に影響が出ないよう、ワクチン接種は開発スケジュールを見比べて予約しなければならないのが大変なところですね。
ウェビナーの登場
かつては様々な企業で説明会や展示会、セミナーなどが開催されていましたが、新型コロナウイルスが警戒される現在、そうした催しはほとんど行われていません。代わりに台頭してきたのが「ウェビナー」というシステムです。
ウェビナーは、Webとセミナーを組み合わせた新しい造語で、ウェブセミナー、オンラインセミナーと同義になります。「どこでも参加出来る」「開催側のコスト削減」「参加人数や収容人数の制限がない」など、ウェビナーには様々なメリットがあり、今後の市場拡大が見込まれています。
また、ウェビナーには「リアルタイム配信」と「録画配信」の2つのパターンがあります。前者は主催者への質問などが出来ること、後者は時間の制約なくいつでも視聴出来るなど、それぞれに独自のメリットがあるので、選択肢の多さも特徴の一つです。
デスクのフリーアドレス化
リモートワークの発展によって、企業の在り方もかなりの変化がありました。その一つが、デスクのフリーアドレス化です。
これは社員それぞれにデスクを割り当てていた今までのやり方を一新したもので、全てのデスクを共用化し、事前に利用予約をして使用するというものです。図書館などの自習スペースをイメージして頂くと、分かりやすいかも知れません。パソコンや私物はロッカーにしまっておき、出社時にはそこから取り出して予約したデスクへ持っていく、という流れとなります。
この制度の最大のメリットは、オフィスの面積を効率よく活用出来る点です。出社していない人のデスクが必要なくなるため、広いオフィスは不要になります。
完全リモートワークに切り替えた企業の中には、小さなオフィスに引越して賃料を抑え、年間コストを数百万円単位でカットしたところもあるそうです。
技術発展の礎にもなった
新型コロナウイルスの蔓延は、各企業のみならず、日本経済にも多大なダメージを与えました。日々の働き方も大きな影響がありましたが、その反面、リモートワークや電子契約、ウェビナーといった素晴らしい技術や制度も生まれました。まさに災い転じて福となす、新たな技術発展の礎となった形ですね。
これらの技術は今だけではなく、新型コロナウイルスの鎮静後も使われ続けることでしょう。これをきっかけに新たな働き方が浸透し、優れたワークライフバランスを実現する企業が増えていくよう、願うばかりです。