システム構築のエキスパートであるSEは、どんな仕事をしているでしょうか?と業界未経験の人から尋ねられた時、真っ先に思い浮かべるのはプログラム言語を駆使したコーディングでしょう。
しかし実際はコーディング作業など、全体におけるほんの一部分の作業に過ぎません。むしろクライアントとの折衝や要件定義、設計やテストケース作成などの方が、圧倒的にボリュームがあるくらいです。
要するに、SEの仕事で最も長く時間がかかるのは、会議や資料作成であるということです。それを効率よくこなすためには、書類作成に特化したツール……そう、つまりMicrosoft Office製品を使いこなせるようになる必要があります。
今回は、SE未経験の方にもイメージしやすいように、実際の業務でOffice製品がどのように使われているかをご紹介します。
会社でのWordの利用場面
Microsoft Word は、文書作成に特化しているツールです。Excelでも文書作成は出来ますが、Wordの方が優れている点として、以下のような点が挙げられます。
・段落や行間、見出し構造の自動調整機能がある。
・作成した段落を読み込むことで、目次を自動作成出来る。
・印刷精度が高い。
・文章校正機能がある。
では上記の点を踏まえたところで、仕事ではどのような使われ方をしているか、見ていきましょう。
設計書
プログラムの基本設計書や詳細設計書など、具体的なロジックについての記載を行います。機能ごとに段落分けをすることで、誰にでも見やすく、分かりやすい構成にすることが可能です。
マニュアル
こちらも段落や見出しの自動調整機能との相性が良い使われ方です。特に目次の自動作成機能との相性が良く、複雑な機能が搭載された業務システムの膨大な項目を一瞬で纏められるため、非常に重宝します。
郵便物などの作成
WordはExcelよりも印刷精度が高いのも特徴です。余白などがズレることなく、画面のイメージ通りに印刷出来るため、ダイレクトメールや請求書などの郵便物を作成するのに向いています。
会社でのExcelの利用場面
Microsoft Excelは、表計算に特化したツールです。データの収集や整理が得意で、Wordよりも自由な表現の書類作成に向いており、以下のような特徴があります。
・データの整理や、それを纏めてグラフ化することが出来る。
・エクセル式やマクロなど、複雑な処理が出来る。
・方眼紙のような使い方も出来る。
・図を使った表現をすることが出来る。
以上を踏まえて、実際のExcelの使われ方について見ていきましょう。
要件定義書の作成
要件定義の場においては、理路整然とした機能説明よりも、イラストなどを駆使したイメージ図が多く用いられます。そのため多くの図や文字を自由に配置出来るExcelの方が、Wordよりも使い勝手が良いのです。
スケジュール管理
業務システム開発は何人ものチームで取り組むため、スケジュール管理を綿密にしなければなりません。Excelを使って表やエクセル式を組み合わせることで、全体を一目で分かりやすく整理することが出来ます。
見積書や請求書の作成
様々な項目の金額を取り扱う見積書や請求書は、表計算ソフトであるExcelが最も得意とする分野です。複雑な計算もエクセル式を使えば自動的に処理してくれるので、効率的に作業することが出来ます。
マクロを使った業務システム開発
Excelの最大の武器と言えば、VBAを使ったマクロ機能でしょう。社内における事務作業だけでなく、印刷物の作成やCSVデータの取り込みなど、様々なシーンで活躍しています。Wordにもマクロ機能はありますが、システムに活用する場合は表形式になっているExcelの方が圧倒的に使い勝手が良いのも事実です。
会社でのPowerPointの利用場面
PowerPointは、会議などでのプレゼンテーションに特化したツールです。豊富な画像や多くの演出効果が用意されているので、印象的で効果的なプレゼンを行うことが出来ます。PowerPointの主な特徴は、以下の通りです。
・豊富な図表のパターンを使うことが出来る。
・アニメーションなどの演出効果を簡単に設定出来る。
・グラフや表を用いてデータを分かりやすく表現出来る。
・テンプレートデザイン機能があり、初心者でも簡単に扱える。
以上を踏まえた、実際の使われ方が以下の通りです。
営業の提案
営業チームの仕事と言えば、多くの企業を巡って仕事を受注してくることです。そのためには自社の製品の魅力を最大限に、かつ最小限の説明で伝えなければなりません。
そこで活躍するのがPowerPointです。豊富な画像やアニメーション、見栄え良く纏まったデザインテンプレートによって、効果的なプレゼンを行うことが出来るため、ガンガン受注してくることが出来るようになります。
社内集会
規模の大きい会社になると、期末などにホテルや講堂に社員を集めて決算報告を行うところもあります。数十人、あるいは百人単位で集まることもあるため、資料は巨大なプロジェクターに投影する必要があり、そんな時にもPowerPointは大活躍します。
目標や売上などもグラフ化して纏め、社員全員で共有することが出来るため、団結心を高めるためにも一役買ってくれることでしょう。
新人研修の教材
毎年行われる新入社員の研修も、大勢の社員に一度に教材を見せる必要があります。学校の教員のように、黒板やホワイトボードに書いて行うわけにはいきませんので、こちらもプロジェクターに映して解説していくのが基本となります。
また、PowerPointのようにデータ化することで、参加者に資料を簡単に配布出来ることも見逃せないメリットです。
互換ツールのあれこれ
ここまでご紹介した通り、Microsoft Officeは非常に便利で使いやすく、素晴らしいツールです。ただしその汎用性、性能高さゆえに、その値段もそれに見合った金額となっています。
例えばAmazonで検索してみると、Word/Excel/PowerPointの3点セットの買い切り方が24,000円、OutlookやNoteも含めたものだと35,000円ほどするため、試しにとポンと出せるような金額ではありません。
そこで、無償で使用可能なMicrosoft Officeの互換ツールについて、いくつかご紹介しましょう。
Open Office
Office製品との高い互換性を誇るツールです。WordやExcelはもちろん、PowerPointまで編集が可能で、更にはPDFファイルへの注釈の追加や、Word/Excel形式への変換まで出来るというのですから驚きです。
ただし、Excelのマクロなど複雑な機能までは対応していませんので、ご注意ください。
Googleドライブ
GoogleドライブにOffice製品を置いた場合、スプレッドシートなど対応するツールを使って開き、編集することが出来ます。Excel式などもほとんどが対応しているため、使用感も抜群です。
こちらもVBAマクロとの互換性はありませんが、GAS(Google Apps Script)という言語でコーディングすることが可能です。
Microsoft Office Mobile無料版
本家Microsoft社が提供しているOffice製品の無料Mobile版です。タブレット等でも閲覧・編集出来るのが特徴ですが、画面サイズ10.1インチを越える端末の場合は閲覧のみしか対応していません。
全ての機能を開放する場合は、月額1,098円~のサブスクリプションを契約する必要があります。
Office製品を使わない企業はない
こうしたOffice製品を扱うのは、IT企業に限った話ではありませんが、ここまでご紹介した通り、SEは特にその恩恵を受けている職業と言えるでしょう。ありとあらゆる仕事の基本と言っても、過言ではないかも知れません。
もしこれからSEを目指す人は、プログラムだけでなくOffice製品の勉強もすると良いでしょう。更にExcelでマクロを組めるようにまでなっておけば、立派な即戦力として重宝されるに違いありませんので、是非ご検討してみてはいかがでしょうか。