2017年の東京都の調査におけるリモートワークの普及率は、僅か6.8%というデータが出ていました。それに対し、2021年3月の総務省の調査結果を見てみると、何と約6倍の38.4%という驚くべき数字になっています。
これはもちろん新型コロナウイルスの影響であり、事実、緊急事態宣言の出されていた2020年5月頃は、56.4%まで上昇したという結果も出ています。ですがこの記事を執筆している2022年現在は、およそ20%程度の普及率と言われており、再びリモートワークの普及率は、下がり気味の傾向になってしまっているようです。
では一体なぜ、このような結果が出ているのでしょうか。リモートワークを導入した場合について、企業側の立場からそのメリットとデメリットを考察してみましょう。

導入するメリット

全世界的に見てリモートワークは推進されており、その視点で見ると日本は後進国と言わざるを得ません。そこには明確な理由があるはずですので、まずはその導入によるメリットを、一つずつ見ていきましょう。

緊急時にも対応しやすい

日本でリモートワークが進んできている最たる理由は、新型コロナウイルスの蔓延であることは、言うまでもありません。自宅で仕事をすることで外出を控え、感染する機会を減らそうというのが目的ですね。
リモートワークの優れた点は、このような事態の時だけでなく、地震や台風のような災害時でも仕事を続けられることです。どんな時でも事業をストップせずにいられるため、企業のメリットは計り知れないものと言って良いでしょう。

優秀な人材を集められる

リモートワークが当たり前になってきていることで、求人におけるセールスポイントとして大々的に載せられるようになりました。
特にSEは効率を重視する傾向にあるため、優秀な人材ほどリモートワークの有無に注視し、会社の時代への対応力を見極めようとしてくるでしょう。そう言った人材を獲得するために、今やリモートワークは欠かせない制度だと言っても良いかも知れません。

遠隔地でも採用出来る

従来の会社に出勤する働き方では、せいぜい通勤が一時間圏内の人しか採用することが出来ません。ですがリモートワークであれば距離という制限はなくなり、どんなに遠方の方でも採用することが出来るようになります。

オフィススペースの効率化

「フリーアドレス」というオフィススタイルをご存知でしょうか。社員それぞれがデスクを持たず、共有デスクだけをオフィスに用意し、必要に応じて予約し使用する、というスタイルのことです。図書館の閲覧室をイメージすると、分かりやすいかも知れません。
リモートワークと共にこの制度を導入すれば、自社ビルや広いオフィスが必要なくなります。高額な家賃や土地代を支払う必要がなくなりますので、一気に固定費を減らすことが出来ます。

各種コストの削減

前述の固定費以外にも、光熱費や社員の通勤費など、様々な場面でのコストを抑えられます。例えば通勤費を見てみると、社員100人が1ヶ月1万円の定期を利用していた場合、それだけで年間1,200万円ものコスト削減が可能です。
社員側からしても、スーツや靴などの消耗品を余計に買わずに済みますし、自炊で食費を減らすことも出来ますので、相対的に給与が上がったと感じる方もいらっしゃるかもしれません。

育休・産休・時短などとの相性が良い

一昔前までは、結婚すると「寿退社」と称して退職する人が多くいらっしゃいました。子育てしながらフルタイムで働くというのは、なかなか無理のある時代でしたよね。
現代は育休や産休、時短勤務といった制度が充実しており、以前と比べて仕事に復帰しやすくなっているのは事実です。ですがそれでも時間の都合がつかず、退職を選ぶ人は少なくありません。特に問題となるのが、保育園の場所と会社までの通勤時間の兼ね合いですね。
そこで活躍するのがリモートワークです。最大の問題である通勤時間を削減出来るので、働き方の選択肢が大幅に増えるのです。

企業全体のデジタル化が進む

日本におけるワークフローの基本はハンコであり、悪い意味で「ハンコ社会」と揶揄されています。何をするにもハンコ、どれをするにもハンコと、あらゆる場面で要求されるため、決裁が滞ることもしばしばです。
そのためリモートワークにおいては、ハンコこそが制度導入のための最大の敵と言っても過言ではないでしょう。このことはかの河野元大臣も同様のことを言っており、「脱ハンコ」政策が打ち出されたことも記憶に遠くありません。
リモートワークの推進は、同時にこれらの悪しき慣習を打ち破る良い機会でもあります。ワークフローなど書類のデジタル化を進め、企業全体の効率化とイメージアップを目指してみてはいかがでしょうか。

導入するデメリット


ここまでの紹介だけを見れば、リモートワークは是非とも導入するべき制度のように思われますが、実際のところ、メリットばかりというわけではありません。リモートワークを導入することによって生じるデメリットについても、見ていきましょう。

情報漏えいのリスクが高まる

業務システムは企業の根幹を為すものであり、機密情報と密接に関わります。当然、それを構築するためには社外秘の情報に触れる必要があるため、常に情報漏えいには気を付けなければなりません。
最大の対策は受注企業内だけでその情報を取り扱うことですが、リモートワークを導入するためには、何らかの形で外部に情報を持ち出さなければならず、その分だけリスクが高まるという弊害があります。

社員の評価が難しくなる

直接社員と接することのないリモートワークでは、仕事の合間に様子を窺うようなことは出来ません。パソコン越しのやり取りだけで相手を評価しなければならず、アピールの下手な人が埋もれてしまう可能性があります。適切な評価を出さなければならない管理職の人にとって、リモートワークはなかなか頭の痛い問題なのです。

会社への帰属意識が薄くなる

リモートの波は企業に限ったものではなく、大学などでもオンライン講義などが実施されていますが、決まって耳にするのが「寂しい」という声です。確かに顔を合わせて直接コミュニケーションを取れない、というのはストレスであり、そう仰る方々の気持ちも分からないではありません。
それは仕事の場でも同じことで、パソコンの画面越しでは今一つ一体感に欠けるものがあります。会社への帰属意識が希薄になり、モチベーションの低下に繋がる可能性が否めません。

社員間の不公平感が出る場合がある

リモートワークを導入することで、全員がそれを活用出来れば良いのですが、中には実際に出社しなければならない方もいらっしゃいます。例えば会社宛ての郵便物を管理する事務の人や、サーバーを物理的にメンテナンスするインフラ系の方々が分かりやすい例ですね。
このコロナ禍と呼ばれる時世、大半の人がリモートワークを望んでいるでしょうから、所属する部署によって、社員同士の間で不公平感が生まれてしまう心配があります。

時代の波に取り残されないために

リモートワークはメリットばかりではなく、多くのデメリットも孕んだ難しい制度だということを伝えることは出来たでしょうか。こうも難しい問題が目白押しですと、企業側からすれば、つい保守的になってしまうのも理解出来なくはありません。
ですが、だからと言って数々のメリットに目を瞑ってしまっては、企業としての成長はありません。デメリットが恐ろしければ、徹底的に対策をし、メリットだけを享受出来るよう、努力するべきではないでしょうか。
リモートワークは世界的にも時流に乗った働き方です。守ってばかりではなく、時代の流れに乗り遅れないよう、積極的に変わっていくことを意識していきたいものですね。

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