多くの企業には独自のルールがあり、社員は少しずつそのルールに慣れていきます。組織の一員として馴染んでいく、という意味では素晴らしい成長だと言えますが、しかし、それが世間の常識だと勘違いしてはいけません。自社内であれば問題なくとも、他の企業においてはタブーとなる可能性はいくらでもあるのです。
筆者がこれまで参加してきた様々な現場の中から、呆気にとられてしまったおかしな慣習を、いくつかご紹介しましょう。
設計書が一切ない
ブラック企業では良くある話ですが、プログラムの仕様書・設計書が一切ない現場は一定数存在します。
その現場での開発は、設計者が開発メンバーに画面イメージだけを渡し、口頭で要件を説明して後は丸投げ、という工程がまかり通っていました。しかも、その担当者が作ったメモ書きを「詳細設計書」だと臆面もなく言い放っており、平然とそれを納品していたのですから驚きです。
当然、プログラムの品質は非常に悪く、クライアントからのクレームは嵐のごとく止まることはありませんでした。
バッチ管理ツールが担当者オリジナル
通常、日々のバッチ管理はJP1などのツールを使うのが一般的ですが、経費削減のためか、担当者のオリジナルツールでバッチ運用をしている現場がありました。
何故かそうしたツールは企業内で共通して使うことはなく、案件ごと、チームごとに作成する決まりになっていました。クライアントから予算が出るわけでもないので、担当者にとっては、ただただ負担が増えるだけの作業。
ツールの運用、管理のリスクも高く、意図の読めない慣習となっていました。
USB使用禁止ルールが中途半端
ベネッセの個人情報流出事件以来、各社のセキュリティ意識は非常に高まりました。ですが、全ての企業が真摯な対応をしているわけではなく、中には「セキュリティ対策をやっています!」とアピールすることだけを目的にした、中途半端な対応をしている企業もあります。
それは「新たなUSB機器を接続した時、Windowsに認識させない」という対応です。確かにこれなら情報流出は避けられそうにも思いますが、ポイントは「新たに」というところ。それまで使っていた外付けハードディスクやUSBメモリはそのまま使えたため、何の効果もないルールです。
結局、そのことは後日取引先にバレて大問題となり、契約を打ち切られてしまいました。
定時後は好き放題
長時間残業が恒常化していたとある企業では、「定時後は仕事さえしていれば何でもアリ」と宣言していたところがありました。
その「何でも」というのは本当に誇張ではなく、食事をしながらであろうが、雑談しながらであろうが、果ては音楽を聴きながらであろうが、仕事さえしていれば認められていたのです。
長時間残業に対するストレスの発散を狙ってのことだったのでしょうが、余りの無法地帯ぶりに、唖然としてしまったのを覚えています。
おかしなルールは黄信号
今回挙げたように、「独自ルール」と呼ばれるものは、安易に手間を省いた手抜き作業に非常に近いところがあります。こうした慣習を何の疑問もなく続けてしまうと、品質の低下やセキュリティリスクを招き、企業はどんどんと堕落していきます。
おかしなルールに違和感を持った時は、すぐに疑問を提示し、少しでも社内環境を良くしていくよう努めましょう。