近年、災害や感染症などにより、テレワークの重要性に注目が集まり始めました。どんな状況でも仕事に取り組めるこの働き方は、非常に便利に思われますが、日本ではなかなか浸透していきません。一見、テレワークと相性の良さそうなIT業界ですら、導入している企業は稀、というのが現実です。

一体何故、ここまでテレワークは採用されないのでしょうか? 導入を阻む背景にはどんな壁があるのか、検証してみましょう。

 

情報漏洩対策

テレワークの導入に対する最大の障害は、行きすぎた情報漏洩への警戒です。2014年7月9日、ベネッセ社で起きた個人情報流出事件を皮切りに、全国の企業でセキュリティに対する意識が大幅に高まりました。

その結果、多くの企業が自社外とのアクセスを厳しく制限し始めました。自社内と取引先以外はメールの授受すら禁止しているところがほとんどで、当然、自宅に仕事を持ち帰ることもできません。

情報を守る、という意識は素晴らしいのですが、現在の日本では「管理する」ことばかりに意識がいき、情報を「使用する」ことが疎かになっています。

テレワークを実現させるためには、自宅でも仕事を可能にするためのシステム作りから始めなければなりません。

 

成果性の報酬ではない

諸外国とは異なり日本では、仕事の成果ではなく労働時間に賃金を支払っている企業がほとんどです。テレワークでは正確な勤務時間を把握しにくく、「見えないところで社員がサボらないか心配」と邪推する管理者もいるため、この制度が致命的となっています。

定量的に作業成果を評価できる仕組みさえあれば良いのですが、一朝一夕には難しいところですね。

 

保守的な風潮


これも日本の企業の特徴ですが、仕事の進め方が伝統的、悪く言えば保守的なところに原因があります。そのためテレワークのような新しい働き方に消極的で、「生産性が下がるのでは」という不安や、「わざわざテレワーク用に仕事を用意するのはコストがかかる」といった理由で後ろ向きになってしまう傾向にあります。

またその他にも多いのが、「社員同士のコミュニケーションが希薄になる」といった心配です。メールやチャットなど、オンラインでの通信手段を駆使すれば問題ありませんが、積極的に受け入れられる環境にはないようです。

企業側の準備不足

常日頃から経営陣がテレワークの導入に積極的でないため、いざ導入しよう、と重い腰を上げたとしても、すぐにそれを実現することはできません。なぜなら、貸与できるPCの数の限界、という物理的な問題に阻まれるためです。

だからと言って経営陣が新たに購入してくれるかと言えばそんなことはなく、結局そのまま有耶無耶になり、テレワークの導入が先延ばしになってしまうのです。

労働者側の躊躇

数々の問題を乗り越え、テレワークが導入されたとしても、実際に利用されるか否か、という点は別問題です。「テレワークにすると評価を下げられるのでは」と不安になってしまい、言い出せずに通常通り出勤する人も多いのだそうです。

日本人は同調圧力に弱い、というのが良く分かる話ですね。

 

新たなシステム作りが必須

ここまで挙げましたとおり、テレワークは思いつきで導入できるような制度ではありません。入念な下準備と、社内改革を行う強い意志が必要なのです。

例えば最近では、通常取捨とテレワークの折衷案のような、「サテライトオフィス勤務」という働き方もあります。WeWorkのようなシェアオフィスをいくつか用意し、そのどれか好きな場所へ出社すれば良い、という手法ですね。

テレワークはうまく導入できれば、求人力の上昇、生産性の向上など、様々なメリットもあるので、是非積極的に取り組んでいってほしいものです。

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