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業務用システムが作られる理由は、業務を効率化して質を高めるためです。そのため、当然システムを作って終わりというわけにはいきません。システムが作られたら、そのシステムを安定稼働させるための労働力が必要なのです。
そしてシステムを安定稼働させるために必要なのが保守・運用業務です。システムエンジニアの仕事はシステム開発に着目されることが多いですが、保守・運用も重要な業務です。同じシステムエンジニアが開発も運用も行うケースもありますが、多くのプロジェクトでは開発と運用が別になっています。
つまり、開発チームが作ったシステムを安定稼働させるための保守・運用チームというものが存在するのです。そこで、今回は、その保守・運用業務に求められる素質について紹介します。
保守・運用業務とは
システムの保守・運用業務とは、言葉の意味通り日々システムが安定稼働しているか、何かトラブルは起こっていないか、をチェックし、トラブルが起こった際には対処に当たる業務です。
具体的なチェック方法としては、物理的な点検、コマンドの実行、クライアントとのコミュニケーションなどになります。
保守・運用業務に求められる素質とは
保守・運用業務に求められる素質には、以下のものが挙げられます。
- 縁の下の力持ちとして地道に作業する素質。
- 見落としやミスなくチェックする素質。
- 日々同じような作業を飽きずに行う素質。
- 生活が不規則でも耐えられる素質。
- コマンド等を自発的に学習する素質。
開発職は新しい技術をキャッチアップしながら試行錯誤する必要がありますが、保守・運用はどちらかというと日々コツコツ同じことの繰り返しになります。
作業的には非常に地味で嫌気が差すこともあるかもしれませんが、それでもミスなく作業をこなさなければなりません。エラーを見落としたりコマンド入力を間違えると運用エンジニアとしての役割を果たせないので、退屈だと感じても間違えずに作業する素質が必要でしょう。
退屈な作業をミスなくこなすのは、簡単に思えて素質が必要です。誰にでもできることではなく、特に長時間の単調作業ができない人には不可能とも言えます。技術的なスキルは努力して勉強すればできるようになりますが、担当な作業を日々ミスなくこなすことは努力しているうちに精神崩壊してしまうかもしれません。
退屈が苦痛ですぐに我慢の限界に達するという人は、明らかに保守・運用には向かないと言えます。逆に、人が退屈と思う作業でもコツコツミスなくこなせる人は保守・運用の才能があります。
また、保守・運用業務には夜勤が発生する場合もあります。24時間稼働するサービスや日中に点検すると開発側の邪魔になってしまうときには、どうしても夜勤で保守・運用業務を行う必要があるのです。
そもそも夜勤がない場合もあれば、三交代、二交代、ケースバイケースですが、生活が不規則になることはあらかじめ覚悟しておいた方が良いでしょう。ここまでの話だと保守・運用に求められる素質は退屈に耐えてミスなく作業する素質や夜勤する素質でしたが、それだけではありません。
開発職ほどではないものの、自発的に技術を学ぶことも必要になります。ほとんどのチェック作業やコマンド入力はマニュアル化されていますが、なかにはマニュアル化されていないものがあったり、またはマニュアルを改良した方が良い場合もあります。
盲目的にマニュアルに従うだけではなく、自らスキルを学んだり業務の問題点を考察し、改良していくための努力ができた方がより優秀な保守・運用エンジニアと言えるでしょう。マニュアル通り動く能力が基本的に重要になりますが、それにプラスして自発的に動く能力も備わっていると保守・運用エンジニアとしてハイパフォーマンスです。
最近は特に技術の進歩によるクラウド化の導入、開発の自由化などにより、保守・運用側からシステムや業務を改善できるケースも増えています。裏を返せば裁量を持って考える必要があるということなので、今後の保守・運用エンジニアはルーティンワークをミスなくこなす能力と新しいところに目を向けて考える能力を持つハイブリッド型が良いですね。
ずっと保守・運用にとどまるのは危険
保守・運用エンジニアの業務内容や素質は上記の通りです。日々のルーティンワークをミスなくこなす能力は幅広く役立つスキルで、なおかつそこに自分で考える能力も備われば最高です。
保守・運用エンジニアとして働くことでこのような能力が身に付きますが、今後もずっと保守・運用エンジニアとして働くことだけを考えるのは危険です。というのも、システム運用の効率化やAI化が進めば進むほど人間が単純作業を行う必要がなくなるからです。
ミスなく単純作業を行う能力は役立つものなのでできるに越したことはありませんが、それはAIがもっとも得意とする作業でもあります。つまり、IT業界のなかでは開発よりも保守・運用の方が圧倒的に機械に仕事を奪われる可能性が高いということです。
おそらく長時間ミスなく単純作業を行うというスキルにおいて、AIに勝てる人間はいないはずです。AIは疲れませんし、バグが発生しない限りミスをすることはありません。インプットされた通り忠実に単純作業を実行します。
人間では勝てないので、保守・運用エンジニアは特に機械にはやれない領域に目を向けた方が良いでしょう。具体的には、開発やコンサルです。保守・運用で培ったルーティンワークを着実に行う能力や考えて業務改善する能力を活かし、新たなキャリアアップを視野に入れることをおすすめします。
IT業界での経験があり、なおかつ一定のスキルが備わっている、ミスをしないで作業できる、といったスペックが備わっていれば開発に移行するのはそれほど難しくないでしょう。開発は人間が考えて作業する必要があるのですべてAI化されるわけではありませんが、それでも単純な部分は今後AI化される可能性が高いです。
コンサルに関しては人間と人間のコミュニケーションなのでAIが簡単に入れる領域ではありませんが、その分高いスキルが求められます。保守・運用エンジニアから仕事が奪われないようキャリアアップするのであれば、まずは開発エンジニアになってより高いスキルを身に付け、そこからスキルを活かしてコンサルに転職する、などのキャリアアップが良いですね。
あくまでも一例なのでこの通りキャリアアップする必要性はまったくありませんが、少なくとも盲目的に保守・運用エンジニアにとどまろうとするのは危険です。
たとえ居心地が良くても市場の変化によってはじき出されてしまう可能性が高いので、コツコツ努力できる能力をうまくいかしてキャリアアップを目指してくださいね。