今の時代システムをまったく使用しない業界はほとんどなく、どの業界でもシステムの需要があります。
そして、それは医療業界も例外ではありません。医療業界ではたとえばカルテの電子化や医療のAI化等、最新技術を踏まえたシステム開発も取り入れられています。
そのためSEからしても医療業界は注目度の高い業界なのですが、ひとことに医療業界に携わるSEと言っても立場が複数あります。
具体的には、SIerの医療システム開発エンジニア、メーカーで組み込みの医療機器を開発しているSE、病院内の院内SEなどです。
それぞれのSEにどのような違いがあるのか等解説していきます。
医療業界に携わるSEの種類
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冒頭でも少し紹介しましたが、医療業界に携わるSEには以下のような種類があります。
- SIerに所属するベンダーSE
- メーカーで医療機器を開発する組み込みSE
- 病院内で勤務する院内SE
- AI等医療分野に活かせる技術を研究するSE
以上のような種類がありますが、四つ目の「AI等医療分野に活かせる技術を研究するSE」については多少例外的です。
というのもSEのなかでもかなり特殊な枠で、一般の求人ではあまり募集がありません。研究職に近い立場のため、たとえば大学院からの推薦等で組織に参入している人が多いです。
どうしてもAIの研究がしたい、医療にAIを役立てたい、といった方には独自に調べていただくとして、ここでは特殊事例なので割愛します。一般的に医療業界に携わるSEは上の三つになります。
それでは、それぞれの仕事内容等について紹介していきます。
医療システムを担当するSIerのSEについて
SIerを大きく分けると独立系、メーカー系、ユーザー系がありますが、いずれも医療機器の開発案件に携わっている企業が存在します。
医療業界側から見ると、いわゆるベンダーのSEという立場になります。
病院内ではたとえば患者の個人情報管理システムや病気の検索ができるデータベースシステムが使用されていますが、それらはSIerのベンダーSEが開発したものです。SIerのSEとして医療業界のシステムを開発するメリットは、医療業界の業務知識が身に付く、技術力が身に付く、といったものです。
また、プロジェクトや会社の状況に応じて他の業界のシステム開発に移動する可能性があるという点も、見方によってはメリットと言えるでしょう。SIerの場合あくまでもシステム屋なので、医療の業務知識と同時にシステム開発のための技術力も求められます。
医療業界の業務知識とIT技術をバランスよく習得できるでしょう。
メーカーで医療機器を開発する組み込みSE について
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次にメーカーで医療機器を開発する組み込みSEについてですが、取り扱う技術分野がSIerとは大きく異なります。
SIerは基本的にパソコンから使用するデータベースやシステムを開発しますが、組み込みSEはたとえばペースメーカーや超音波診断装置といったパソコンで使用するのとは別の組み込みシステムを開発します。
医療機器を含めパソコンと独立して動くシステムにはマイコンという小型のチップ型コンピューターが組み込まれていますが、そのマイコンに対してロジックを実装していくのが組み込みSEの仕事です。
技術的にはSIerのSEよりも高度な技術が求められますが、それと同時に技術の特殊性もあります。医療機器という難しいシステムを取り扱えるやりがいはありますが、技術の汎用性が低いというデメリットもあります。
ただし組み込みSEのスキルはたとえばWebエンジニアなどよりも高い傾向にあるため、組み込みSEがWebエンジニアに転身する際なども独学で勉強すれば必要スキルが身に付くのも早いでしょう。
直接的な技術の汎用性は低いものの、技術レベルが高いので他にも応用が利くということです。
病院内で勤務する院内SEについて
医療業界SEと聞いて最初にイメージされるのはこの病院内で勤務するSEかもしれません。
SIerのSEが病院内で作業しているケースもありますが、病院の院内SEと病院内でシステム開発を行うSIerのSEは別物になります。
立場としては、病院内でシステム開発を行うSIer側がベンダーで、病院の院内SEはクライアントになります。これについては、医療業界だけでなく他の業界でもまったく同じ構造になっています。
そして病院内で勤務する院内SEの仕事内容は、他の業界の院内SEと大きく異なるわけではありません。
他部門やベンダーと連携する必要があるので医療業界内の業務知識が必要不可欠ですが、技術力についてはSIerのSEや組み込みSEほど高度なものは求められない傾向にあります。
ただし他部門のパソコンやサーバー管理等も担当することになるため、SEと言っても管理業務や事務業務が中心になります。
たとえば社内で使用するシステムや医療機器が必要になった際も、院内SEが開発するのではなく外部に委託します。
簡単な修正や設定なら院内SEが行う場合もありますが、それも開発者の話を聞いて操作するレベルなので、開発者というよりはITに詳しいユーザーのような立場になります。
医療業界の院内SEは安定していて他のSEほど激務ではありませんが、ITスキルが身に付きにくいというデメリットもあります。
結局どのSEを目指すべきなのか
上で説明した通り、ひとことに医療業界SEと言っても立場によって仕事内容がまったく異なります。
募集が一番多いのはSIerで、技術の汎用性としても高いでしょう。組み込みSEについては、特定の技術分野への興味関心が高い人におすすめです。
院内SEは、スキルアップよりもワークライフバランス等私生活も充実させながら安定的な給与を得たい人におすすめです。
どれが正解というわけではなく一長一短なので、自分の希望に応じて立場を選択する必要があります。
また、たとえば若いうちはスキルアップのためにSIerでバリバリ働いて、結婚や出産を機に病院の院内SEを目指す、といった選択肢もあります。
何年も先の話だと必ずしも計画通り事が運ぶとは限りませんが、臨機応変に対応する前提であればこのような計画を立てた上で立場を選択するのも良いかと思います。
最後は自分自身がどうしたいかによりますが、今回ご紹介したお話を参考になって、自分自身にあった道を探してみてください。