「働き方改革を学ぶ」4回目の今回は、新制度についてご紹介しましょう。

これまで取り上げてきた内容は、「企業側は〇〇しなければならない」という、どちらかと言えば規制を強化する動きのものでしたが、労働者側と企業側、両方にメリットがある新制度についても覚えておかなくてはなりません。その詳細について、じっくり見ていきましょう。

 

3ヶ月フレックスタイム制

フレックスタイム制そのものは珍しい話ではなく、これまでも求人票に掲げている企業は沢山ありました。しかし、総労働時間のやりくりは1ヶ月単位でしか行えないため、うまく活用するのは難しかったと言わざるを得ません。

しかし今回の働き方改革では、その調整できる単位を、最大3ヶ月まで広げることが出来るようになりました。

どういうことかイメージするために、具体例を見てみましょう。

・基準となる時間

旧:1ヶ月内で177時間を自由に割り振り可能(週40時間×31日÷7日≒177.14時間)

新:3ヶ月内で525時間を自由に割り振り可能(週40時間×92日÷7日≒525.71時間)

 

これに該当する例を挙げてみます。

1日の所定労働時間が8時間の労働者の場合で考えてみます。

非常にうまく3ヶ月フレックスタイム制を活用したケースでは以下のようになります。

・具体的なスケジュール
6月:205時間の勤務(勤務日20日、残業45時間)
7月:200時間の勤務(勤務日20日、残業40時間)
8月:120時間の勤務(勤務日15日)

この例では、6月と7月に多めに働いておくことで、8月の勤務日を5日も減らすことが出来るようになっています。土日と合わせて最大9連休にも出来るため、お子さんの夏休みに合わせて長期旅行に行くことも出来るんですね。

ただしこの制度には、「残業時間の上限規制」との兼ね合いという弱点もあります。1ヶ月の残業時間は45時間以内でなければならない、という点を忘れてはいけません。

特に3ヶ月単位の基準となる最初の2か月の勤務時間が少ないと、3ヶ月目の残業時間が規制を越えてしまうことになるため、注意しましょう。

 

勤務時間インターバル制度の努力義務

過剰な連続勤務を防ぐため、「勤務後から次の勤務まで、10~11時間程度の休息を設けることが望ましい」という内容の指針です。EU諸国では法律になっているそうですが、日本の場合はあくまで努力義務で、法的な強制力はありません。

これは労働者の健康を守るための制度ですが、実は企業にとっては、副次的な大きなメリットがあるんですよ。

それは「生活残業(理由なく残業して賃金を不当に稼ぐこと)」の抑止です。

無意味にダラダラと残業した社員は、翌日の始業時間を遅くせざるをえなくなり、結果として労働時間が減ってしまいます。最悪欠勤となれば、評価も賃金も下がるため、誰も生活残業などしなくなるでしょう。

事業者の方は、無駄なコストを省くためにも、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

高度プロフェッショナル制度の創立

この制度を一言で説明すると、「高給かつ高度な職業能力者に対する、成果型労働制」です。つまり「能力の高い人を成果のみで評価しよう」という目的で、対象者は労働時間の規制や、残業時間の割増率が適用外となります。
これは労働者にとって、デメリットというわけではありません。労働時間の規制に捕らわれないということは、スケジュール(出勤日や休暇)を自由に決められる、成果に応じた正しい報酬を得られるなどのメリットがあるのです。
この制度の対象となるのは、以下に該当する人です。

  • 年収が1,075万円以上
  • 金融ディーラーや研究開発のような「労働時間=成果物」とは限らない職種
  • 書面によって合意が取れた労働者

ただし、この制度は非常に難しい部分もあるのが難点です。

提案するのが誠意ある事業者なら労働者とWin-Winの関係を結ぶことでしょうが、この制度を悪用し、労働者に過剰な労働を求めたり、評価基準をごまかし正当な報酬を支払わない、というケースも容易に想像できます。

現時点では、信用の置ける事業者を相手にした場合や、自分の能力によほど自信がある場合を除き、この制度に合意を取らない方が賢明と言えそうです。

 

今後の動向に期待

今回ご紹介した3つの新制度は、企業側と労働者側、双方にメリットがある、有意義な制度でした。

しかしどれも運用が難しく、まだまだ発展途上だと言わざるを得ないところがあります。

うまく機能すれば、社会は非常に明るくなっていく制度ばかりですので、今後の動向に期待していきましょう。

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