IT業界は日進月歩の世界であり、常に向上心を持って行動しなければ生き残ることは難しい業界です。それを実現するためには、個人だけではなく、会社組織そのものを向上させなければなりません。
ですが、改革の志だけが高くとも、運営方法を間違えてしまうと逆効果です。本来の業務の大きな足かせになってしまい、待つのは本末転倒の結果だけです。
今回は、そんな無意味な仕事が増えてしまった、悪い実例についてご紹介しましょう。
全社員への日報義務化
仕事を効率よく進めるために、チーム内での日々の成果の共有は、絶対に欠かせません。特にSEはチームワークが命の業種ですので、非常に有意義なアクションだと言えるでしょう。
そのために、日報や週報での業務報告が有効ですが、それを余りにも過剰に重要視してしまうと、要らぬ負担となりかねません。
例えば前に筆者が勤めていた会社では、日報の提出を全社員に対して義務付けていました。その程度なら、と思うかも知れませんが、大変なのは管理職の方々です。上長は部下全員の日報に対し、一言ずつコメントを返さなければならなかったのです。
一言ずつとは言え、毎日十人以上の部下にそれを行うのが、どれほどの負担だったかなど言うまでもありません。管理職の残業が大幅に増えてしまったために、その制度は三か月もした頃には廃止されました。
朝礼スピーチ
毎日朝礼を行っている会社は少なくありませんが、その中にはローテーションで社員にフリースピーチを行わせるところもあります。その慣習には賛否両論あると思いますが、大勢の前で話をする練習として考えれば、十分に意義のあるものでしょう。
しかし、以前筆者が所属していた会社では、そのスピーチには必ずパワーポイントの資料をセットで用意しなければなりませんでした。資料作りの練習のため、という名目はありましたが、それが本業を圧迫してしまうのであれば、デメリットの方が目立ちます。
かなり評判の悪い制度でしたが、少なくとも筆者のいた一年余りの期間においては、ずっと続いていました。
技術向上サークル
この取り組みは、「業務に慣れていない新人のために月に数回集まり『何か』を作って技術向上を目指す」という試みでした。確かに研修だけでは経験まで補うことは出来ませんので、実践的な勉強の場としては素晴らしいアイデアだと言えるでしょう。
ですが、現実的に考えれば、業務の合間に行えるようなものではないことがすぐに分かります。スケジュールは各個人で異なるため、何人もが同時に集まれる機会など、そうそう作れません。
このサークルも、実際に活動するための準備を延々と話し合うばかりで、実際の活動は一回も行わないまま立ち消えとなってしまいました。
志ばかりではなく、実現性も考える
日々を漫然と過ごさない、常に一歩先へと目指す心がけは、非常に立派なものです。しかしそのやり方を間違えてしまうと、何の意味もない無駄な時間になってしまいます。
改革を目指すのであれば、その効果と実現性を同時に考えなくてはなりません。まずはそうした「改善策を考えること」を考えるところから始めると良いのではないでしょうか。