人とコミュニケーションを取るのが苦手だから、SE(システムエンジニア)になった。そんな方も多いのではないでしょうか。
しかし、どのような職種でも、コミュニケーション能力は必要不可欠です。システム開発が主な仕事内容で、パソコン作業が多いSEも例外ではありません。
この記事では、SEに求められるコミュニケーション能力とは何かということについて解説していきます。
そもそも、「コミュニケーション能力」って何?
様々なビジネスシーンで使われている、「コミュニケーション能力」という言葉。
あまりにも意味が広すぎて、話している本人ですら、「コミュニケーション能力」とは何なのか分かっていない場合もあるのではないでしょうか。
接客業の方がお客さんと接するときのような、笑顔で明るくお話しすることも、そのひとつです。しかし、SEにそのような類のコミュニケーション能力は必要ありません。
具体的には、以下の3つの能力が必要となります。
クライアントの話を理解する能力
コミュニケーションは、自分から一方的に話すだけでは成立しません。
相手の話に静かに耳を傾け、相手が何を伝えようとしているのかを考えることも立派なコミュニケーションです。
この「聞く力」こそ、SEに最も求められるコミュニケーション能力だといえます。
システムの仕様を決めるときの打ち合わせでは、クライアントから様々な聞き取りを行う必要があります。
現状の業務の何が不便なのか、新しいシステムでは何を実現したいのか、等々。
しかしながら、「具体的には言えないけど、何か不便」「とりあえず、今のシステムより使いやすくなればいい」など、ふわっとしたイメージしか話してくれないクライアントもいるかもしれません。
クライアントは、当然その業務のプロですが、システム開発のプロではありません。
また、SEと同様、クライアントも「話す」ことに関してはコミュニケーション能力が不足している可能性もあります。
今の業務の問題点を、そのままシステム開発に落とし込めるようクライアントに説明してもらうのを求めるのは、酷というものでしょう。
SEに求められるコミュニケーション能力は、あいまいな話の中から、クライアントが抱えている真の問題点を見つけることだといえます。
ときには「それってつまりこういうことでしょうか?」と質問してみたり、イメージ図を描いてみたり。可能であれば、簡単なプログラムを作って動かしてみるのも効果的です。
クライアントの知識レベルで話す能力
IT業界では、仕事内容の関係上、英語やその省略語が頻繁に飛び交います。
「SCM」(Supply Chain Management)や、「CRM」(Customer Relationship Management)など、SEであれば知っておかなければならない言葉ですが、システム開発に疎いクライアントが聞いてもさっぱり意味が分からないはず。
こうした専門用語を使わず、簡単な言葉で、システムの仕様や開発の進捗を伝えることも、SEに求められるコミュニケーション能力のひとつです。
SEなど、専門的な知識を持っている方は、会話や文章の中で難しい言葉をつい使ってしまいがちです。
会社の中には、自分と同じか、それ以上の技術力を持っている人が大勢いるため、「このくらいの言葉の意味は相手も知っているだろう」と過信してしまうのです。
あるいは、クライアントに良い印象を与えたい、賢く思われたいという意識も少なからず働いているかもしれません。
しかし、本当に賢い人――コミュニケーション能力が高い人は、わざわざ難しい言葉を使わなくても、会話や文章から知性が感じられるもの。
良い例は、テレビのニュース解説番組。専門用語は使わず、簡単な言葉で複雑な世界情勢を解説しており、「クライアントにもこう話せばいいのか」と、コミュニケーション能力向上の参考になるはずです。
ビジネスマナー
ここまでに挙げた、「クライアントの話を理解する能力」と、「クライアントの知識レベルで話す能力」は、確かにどちらも大切です。
しかし、最も重要なのは、社会人としてのビジネスマナーです。これが欠けていると、どれだけ素晴らしい提案ができたとしても、クライアントの信頼は得られません。
クライアントの話を聞くときは、あいづちを打つ。システムの仕様を説明しているときは、クライアントの目を見て話す。
緊張して、たどたどしくなっても構いません。その人が誠実であるか、自分たちの業務の問題点を親身に考えてくれて、よりよいシステムを作ろうとしてくれているかは、必ずクライアントにも伝わっています。
また、もちろん身だしなみも大切です。ある調査によると、人の第一印象の9割は見た目で決まると言われているようです。
高いスーツや腕時計を身につける必要はありませんが、クライアントと打ち合わせをするときは、清潔感のある服装や髪型を心がけるようにしましょう。
まとめ
- クライアントの話を理解する能力
- クライアントの知識レベルで話す能力
- ビジネスマナー
SEに求められる「コミュニケーション能力」は、以上の3点だといえます。
雑談ができたり、難しい言葉を知っていたりすることと、コミュニケーション能力の高さは必ずしも一致しません。
口下手でも、クライアントの言葉に真摯に耳を傾け、分かりやすい言葉でシステムの仕様を説明する。SEが磨くべきなのは、むしろそうした力なのです。