エンジニアは転職率の高い職種なので、20代で転職を考える方も多いです。ただし、理由は人それぞれ異なります。たとえば、職場がブラック、今とは違う技術を身に付けたい、年収をアップさせたい、といった理由が挙げられます。
転職理由によって準備内容も多少異なりますが、いずれにしても転職先の企業担当者が納得するアピールを行う必要があるでしょう。そこでこのページでは、20代で転職を考えているエンジニアがやりがちなことと、それを防ぐための対策について紹介します。
やりがちなこと5選
参考URL:https://pixabay.com/
まずは、20代で転職を考えているエンジニアがやりがちなことを挙げていきます。
- 自分の社内での価値と市場価値を混同している
- 転職理由がうまくまとまっていない
- 人手不足だから簡単に転職できると考えている
- 技術力さえあれば良いと考えている
- 自分で勉強していない
以上のようなことが挙げられます。一言でまとめると、経験の浅さから、自分に対しても市場に対しても楽観視しすぎている状態です。もちろん人によっては逆に悲観的に考えすぎている場合もありますが、いずれにしても自分の価値や市場の状況を見誤っているケースが多いです。
1.自分の社内での価値と市場価値を混同している
これは非常によくあるパターンですが、社内での自分の評価が必ずしもそのまま市場での評価に直結するとは限りません。社内で頑張れば社内での評価は上がるかもしれませんが、そのことが必ずしも市場価値の高いスキルの習得に結び付くとは限らないのです。
20代半ば~後半になると社内では新人の頃よりは責任のある立場になり、技術面を含めて新人教育やマネージャーとしても期待され始めるかもしれません。そういった業務を通して得た経験は転職先でも間違いなく役立つものなのですが、転職先の企業でそのまま同じように活用できるかどうかはわかりません。
企業によっては、中途採用した社員が前の会社のやり方にこだわることを嫌がります。企業ごとにそれぞれやり方があるので、前の会社の経験が活かせる部分は活かして、新たに学ぶべき部分に対しては謙虚に学ぶ、といった姿勢が求められるでしょう。
現職での経験を活かすのは良いことですが、過信しすぎるとかえって転職先から懸念されることになるので、自分を客観視することが重要になります。そのためには、市場分析と自己分析が重要になります。
市場ではどのようなスキルが求められているのか、そのなかで今自分に何があるのか、足りない部分は何か、といったことを明確にしていきます。それらを明確にしたうえで、具体的な戦略を練っていくと良いです。
20代のうちは根拠のない自信や勢いもときに重要なのかもしれませんが、20代後半になると特に自分を客観視してアピールしていかないと採用されないことはもちろん転職先選びにも失敗してしまうかもしれません。
会社での評価だけでなく、市場のリサーチに基づいて自分の市場価値を確認し、それを高めるための対策をすると転職成功率が高まります。エンジニアの場合市場価値の高い技術を身に付けると圧倒的に転職しやすくなるので、リサーチは怠らないようにしてください。
2.転職理由がうまくまとまっていない
転職理由は人それぞれですが、面接や応募書類ではそれをうまくまとめる必要があります。すでに明確なビジョンがある方はそれを説明すれば良いのですが、なかには「なんとなくもっと技術力を身に付けたい、キャリアチェンジしたい」「そもそもブラック企業を抜け出したいなど前向きな理由ではない」といった状況の方もいるかもしれません。
もちろん、実際の転職理由がどうであれ企業の人事担当者が納得する理由に落とし込まないと採用されません。悪く言えば場合によっては多少の嘘も必要なのですが、そのためにはきちんと説明できるだけの情報量がまずは大前提になります。
企業で扱っている技術内容、市場価値の高い技術分野、今後のAI化の動向など、最低限の情報が頭に入っていないと自己PRも志望動機も抽象的なものになり、面接での会話も膨らまないでしょう。
逆に言えば、必要な情報が頭に入っていれば自己PRも志望動機も自由に作りやすいかと思います。たとえば、「今後市場で求められる技術、システムは○○だから今後その技術を身に付けることを目標としている」「30歳以降は技術力をベースにマネジメントにも力を入れていきたい」「個人受注できる案件は○○が多いので、将来的な選択肢を広げるためにも〇○をメインに取り組んでいる御社を志望している」「○○の技術を身に付ければ今後のAI化に対応できるエンジニアに成長できると考えている」といった具体的な動機を説明しやすくなります。
志望動機や自己PRは自己分析によって、自分の内側から見つかると考えている方も多いかもしれません。もちろんそのやり方でうまく見つかる方もいるかもしれませんが、自分の内側をいくら探っても何も出てこないことが多いでしょう。
なぜなら、転職に際しての必要な情報が足りていないからです。インプットしていないものをアウトプットするのは不可能で、仮に無理やりひねり出しても的外れなものになるはずです。
新卒採用の面接であれば「部活動での経験が仕事の○○に結び付く」「アルバイトを通して身に付けた協調性、リーダーシップが御社でも活かせる」といった自分の内側から出せる抽象的な内容でもまだ許される可能性があります。
しかし中途採用の場合前職の業務内容と転職後の業務内容を具体的に照らし合わせて自分ができることや企業側のメリットを提示していく必要があるので、市場分析と企業分析が具体的にできていないと志望動機も自己PRも的を射たものは作れません。
逆に言えば、必要な情報が足りていれば極端な話そこまで熱意がなくても具体的なプランと合わせてアピールすることができるので、人によっては新卒の面接よりも楽に感じるかもしれません。
新卒の面接では「人間性」や「熱意」をアピールするための抽象的な会話がメインになるのに対し、中途の面接では「技術」や「自分にできる貢献と企業側のメリット」といった具体的な会話がメインになります。
新卒面接の感覚で面接に臨むと、人事担当に「知識不足」「学生気分が抜けていない」「言っている内容が抽象的で考えが浅い」「IT業界全般や仕事に対する視野が狭い」「与えられた仕事だけをこなせば良いのは新人まで」といった印象を持たれる可能性があります。
なるべく具体的に話せるよう準備していきましょう。
3.人手不足だから簡単に転職できると考えている
IT業界は確実に人手不足で、特にSIerは慢性的に人が足りていません。なので事実20代であれば転職難易度は低いです。ただし、それは会社を選ばなかった場合の話になります。具体的には、SIerの下請け企業などです。
SIerの上流工程やWeb系の企業は人気があるので、IT業界全体が人で不足であっても高倍率です。たしかにIT業界は人手不足で参入障壁が低いのですが、残念ながら人手不足はSIerの下請けに集中しているということでした。
いくら人手不足でも業界内で人気の企業は人が集まってくるので、簡単に入社できるわけではありません。労働環境や年収的にメリットのある企業に転職したいのであれば、上述したリサーチ等の準備は必要不可欠です。
人が集まらなくて倍率が低い企業には何かしら問題があるケースがほとんどなので、そういった企業を避けるためにもリサーチは重要でしょう。
4.技術力さえあれば良いと考えている
参考URL:https://pixabay.com/
エンジニアにとって技術力は当然重要で、技術力があれば転職先として選べる企業も多くなります。しかし、技術の幅は広く、自分の持っている技術とプロジェクトで扱っている技術内容がドンピシャで合致するケースは稀です。現状の技術力だけですべて賄えるわけではないので、特に20代は今後のポテンシャルを人事担当に感じてもらう必要があるのです。
そのために必要なのはアピール力で、面接でのコミュニケーションをしっかり行うしかありません。書類に自分のスキルを書けばそれで良いという考え方は間違いで、自分の口で伝えるコミュニケーション能力は必須になります。
また、多くの場合企業に所属するエンジニアは経験を積めば積むほどマネージャーとしての役割を求められます。技術に特化したエンジニアも存在しますがそれは少数派で、会社員のエンジニアならなおさらです。
技術を扱える人材は昔よりも増えており、理由としては昔と比べて開発が簡単になったことや、ITに関心のある人が増えたことなどが挙げられます。若手でも技術力の高い人は数多く、同様に外国人エンジニアも増加しています。
今後人件費の安い国へのオフショア開発は増えていくと予想されるため、日本人の賃金水準だとやはりマネジメントの役割が求められると考えて間違いないでしょう。技術に特化するなら抜きんでた技術力やアイデアが求められますが、それがあるなら会社員よりも個人事業主や起業を選択した方が良いかと思います。
技術一本に絞るにはそのくらいの覚悟や取り組みが必要なので、普通に会社員としてやっていくならマネジメントも意識することをおすすめします。面接できちんとコミュニケーションが取れない人に企業はマネジメントを任せるわけにはいかないので、結局のところ転職のためには技術力とコミュニケーション能力の両方が重要になるということです。
5.自分で勉強していない
最後に、自分自身で勉強しないと自分の市場価値を高めていくのは難しいです。業務に必要な知識はその都度習得しているはずですが、上述の通り一言に技術と言っても幅広く、現職での経験がそのまま転職先で活かせるとも限りません。
企業の採用担当者はそのことをよくわかっているので、自分で転職に必要な技術を磨いていないエンジニアに対してはマイナス評価になってしまうのです。自分で勉強しないことで必要な技術力が足りていないだけでなく、「自ら学ぶ意志がある」というアピールもできなくなります。
業務に必要な技術を学ぶことはエンジニアとして働くうえで必須事項ですが、優良企業であればあるほどプラスアルファを求めます。つまり、システム改善や新たな提案、開発のための勉強です。
単に業務に必要な最低限の技術をその都度学習するだけではなく、プロジェクトや会社を引っ張っていく意識で技術に向き合ってほしいということです。新卒エンジニアの場合業務に必要な技術を自ら学習しているだけでも評価されますが、中途採用のエンジニアの場合それだけではなく、もう一段回踏み込んで企業に利益をもたらす存在になってもらいたいからです。
もちろん企業によって考え方が異なるので一概には言えませんが、変化の激しいIT業界では経営陣含め一寸先は闇のような状況で、常に頭を悩ませています。「企業を今後どのように成長させていけば良いのか」「今の方針で大丈夫なのか」「技術が陳腐化すれば経営が厳しいのではないか」といった具合です。
そんななかで、たとえば若手ならではの目線で市場や技術を分析し、提案してもらえると上層部としてもありがたいということです。与えられた役割をこなすための技術力はもちろん、もう一歩踏み込んだ市場、技術の勉強やそれに基づいた会話ができると採用面接でも評価は高くなるでしょう。