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ITゼネコンとは、IT業界を土木建築業界に例えた表現です。土木建築業界では一般的に多重請負構造が常態化しており、工事を直接請け負った大手建設会社の下請けに何重にも中小から零細の建設会社がくっついています。

もともとはこのなかの最大手、つまり工事を直接受注している総合建設業者のことをゼネコンと呼んでいたのですが、意味が派生して上記の多重請負構造自体をゼネコンと呼ぶ場合もあります。

では、なぜIT業界にこの土木建築業界のゼネコン構造が例えられているのでしょうか。

IT業界でも多重請負が常態化

土木建設業界で多重請負が常態化していることは上記の通りですが、それと同様にIT業界でも多重請負が常態化しています。IT業界のなかでもSIerといって大規模な業務用システムを開発している業界がこれに当てはまるのですが、結果的にSIerの業態のことをITゼネコンと呼んでいます。

つまり、ITゼネコンと聞いたらSIerをイメージすれば良いのです。ちなみにこのITゼネコンは法的にグレーゾーンで、厳密には多重請負は禁じられています。暗黙の了解のようになっているので多重請負だからすぐに会社が倒産に追い込まれるようなことはありませんが、今後淘汰されていくことが予想されます。

実際国が主導のプロジェクトでも多重請負が一般化しているのですぐに取り締まると日本全体のシステムに影響が出てしまうのですが、徐々に多重請負構造を廃止し、各企業や個人が自由に開発現場に参入しやすい体制に移行してきてはいます。

日本のITゼネコン構造は海外のIT業界からも問題視されているため、国際化がより一層進めば自然と是正していく必要性も生まれるでしょう。次に、ITゼネコン構造のなかでのそれぞれのポジションごとの役割について解説します。

ITゼネコンに組み込まれる位置で役割が異なる

ITゼネコンの構造は上記の通りですが、わかりやすく簡単に図示すると以下のようになります。

顧客→大手ITコンサル会社→大手SIer(元請け、一次請け)→中堅SIer(下請け、二次請け)→零細SIer(三次請け)

上記のような構造になっています。プロジェクトによって大手ITコンサル会社が入ったり入らなかったりするのですが、具体的な企業名としてはアクセンチュアなどが有名でしょう。

次に、大手SIerが入りますが、コンサル会社が介入しない場合大手SIerが直接顧客とやり取りします。具体的な企業名としては、日立、富士通、NTT、NECなどが有名でしょう。これら大手SIerがプロジェクトのリーダー格となります。

次に中堅SIerが入るのですが、中堅SIerは大手SIerのグループ会社であるケースが多いです。なので、各プロジェクトの大手SIerとセットで付いているイメージになります。最後に、零細SIerが孫請けとして入ります。

規模の大きいプロジェクトだと、孫請けの下にさらに下請けが入る場合もあります。零細SIerについては数多いですが、このなかにはフリーランスエンジニアも含まれます。以外に思われるかもしれませんが、フリーランスエンジニアがITゼネコンのプロジェクトに参加する場合、階層としては一番下に入るケースが多いです。

仲介料がない分給与的には大手SIerの社員以上にもらっているケースが多いのですが、立ち位置的には最下層になります。次にそれぞれの役割についてですが、上記の図の通り上流工程から下流工程に流れています。

つまり、大手SIerほど上流工程を担い、下請けのSIerほど下流工程を担います。具体的な作業としては、上流工程が要件定義~基本設計、下流工程が詳細設計~テストまでになります。

どの企業がどこを担うかはケースバイケースですが、傾向としては上記のようになります。ただし、孫請け企業のエンジニアが要件定義を行うこともあれば、大手SIerの従業員がプログラミングを行うこともあります。

それでもプロジェクト全体の予算管理や人員管理は大手SIerの従業員が行うケースが大半です。給与的にも、大手SIerほど高い傾向にあります。(フリーランスエンジニアは例外)ITゼネコンのなかで高収入を狙うのであれば、大手SIerや上流工程を担うエンジニアを目指すか、フリーランスとして現場に参入することになるでしょう。

下請け企業のエンジニアの方が高収入のケースもありますが、かなり稀なケースです。しかもバグが直らなくて家に帰れない、といったしわ寄せは下請けエンジニアが被るケースが多いです。

もちろんプロジェクトの責任自体は上流工程にあるので上流工程が楽というわけではありませんが、実作業を行う分下流工程の方が労働時間が長くなりがちです。ITゼネコンでは下流工程ほど長時間労働かつ低賃金になりがちなため、その点でも土木建設業界のゼネコンと仕組みは同じです。

下請けから元請けに転職するのは難しい

上記のような構造から、下請け企業のSEはなんとか状況を打開したいと考えるケースが多いです。しかし、元請け企業に転職することは非常に難しいです。なぜなら、元請け企業ほどエンジニアを新卒採用して社内で育てているケースが多いからです。

下請けエンジニアがどのような戦略を取るかは自由なのですが、大手SIerを目指すよりはWeb業界やフリーランスを目指す方がハードルが低く、なおかつスキルアップ次第で収入も付いてきます。

大手SIerの場合スキルもさることながら上流工程を担っているので社内政治や人間関係が重要になります。技術力に対してマネジメントスキルというものもありますが、マネジメントスキルはかなり抽象的なもので、なおかつ人間関係がかなり絡んできます。

つまり、たとえいくら技術力が高くて予算や人員管理スキルに長けていたとしても、外部からITゼネコンの上流工程に入ることは難しいということです。私自身準大手SIerくらいの企業に在籍していましたが、スキルアップをしていきたい、スキルに応じて報酬アップしていきたい、ということであればWeb業界やフリーランスを目指した方が良いと感じました。

逆に、狭き門であっても入り込む自身があり、技術やマーケティングよりも何より人間関係が得意だ、といった方は大手SIerを目指すのもありかと思います。あまりそのような事例は見たことがありませんが、たとえばプロジェクト内で大手SIerの人と交流し、そこから大手SIer入社へのコネにつなげていくことも不可能ではないかもしれません。

実際そういったケースも稀にあるようです。

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