情報社会となって久しい現代では、家にいながらにして、ありとあらゆる情報を探すことが出来ます。もちろん求人もその例に漏れず、例えば就活サイトだけでも何十と言う種類があり、日本中の企業を見ることが出来ます。
ですがだからと言って、自分の望む求人がよりどりみどりかと言えば、そんなことはありません。むしろ多すぎる選択肢に迷わされることもしばしばですよね。
特に厄介なのが、求人票の文面と実際の業務が異なるケースです。企業側からすれば、一人でも多くの応募を募りたい故に起こることなのでしょうが、被雇用者側からすれば、そんな情報は単なるノイズでしかありません。
今回は、実際に筆者やその周囲の就職活動の実例から、フェイク情報にまみれた求人の一例をご紹介しましょう。
「自社開発」というセールスポイント
SEの求人において、業務形態が「SIer」か「自社開発」か、というのは極めて重要なポイントの一つです。様々なメリット・デメリットを考えると、どちらが良いとは一概には言えませんが、このうち「自社開発」と書かれた求人には注意が必要です。
・ケース① プロジェクト次第
自社開発は数あるプロジェクトの中の一つでしかなく、大半は全てSIerとしての業務だった、というケースは少なくありません。この場合、自社開発プロジェクトは古くからの担当者で固定されていることが多く、まずそのチームに入ることは出来ないでしょう。
にも関わらず求人情報に掲載されているのは、応募母数を増やすための、聞こえの良い釣り文句というわけです。
・ケース② 本社のみのプロジェクト
特に全国展開している企業に多いケースですが、自社開発は本社でしか扱っていない、というケースです。支社や別オフィスで働きたいという人は、①と同じくSIerに回されることがほとんどでしょう。
・ケース③ 単純に嘘
自社内での開発業務はあるものの、実際は他会社からの二次受け・三次受けの案件ばかりだった、というケースも少なくありません。この場合、通勤は安定しても収入面は伸びにくく、あまり良い求人とは言えません。
最近は本当に自社開発や受託開発を行っているところは少なく、業界ごとの大企業か、あるいはよほど特化した技術・ノウハウを持つ企業でなければ、SIer企業だと思っておくと良さそうです。
もちろんSIer企業にも、「必要以上に会社に帰属せず働ける」「色々な現場に参加出来る」などの多くのメリットがあるので、自分にとって何を優先するのか、しっかり考えなければなりません。
専門性の高い就活サイト
就活サイトは今や数えきれないほどの種類があり、その多くは細かく細分化されています。例えばリクナビであれば、新卒者をターゲットとした「リクナビ」、転職者をターゲットとした「リクナビNEXT」に分かれている、と言った具合ですね。
中には「○○のための就職専門サイト」というセールスポイントが銘打たれていることも多く、そのターゲットとなる人には非常に有難い存在のように思えますが、実際はそこまで便利なものではありません。
と言うのも、専門性の高さとは、イコール絶対数の少なさでもあるからです。求人のほとんどは首都圏に集中しており、一人一人の選択肢はそう多くはならないでしょう。
例えば筆者の妻は「リアルミーキャリア」という、働くママのための、時短に特化した求人サイトに登録していたのですが、首都圏どころか東京23区以外の案件はほとんどない、という結果に終わってしまったのです。
これは他の専門性が高い就活サイトも同様で、好条件の求人が多い「レバテックキャリア」も、その求人は首都圏に集中している傾向があるらしく、地方に住む人にとっては使いにくいものとなってしまっています。
ただしこれは、逆に言えば首都圏に住みさえすれば、好条件の求人が多くあるということでもあります。そう言った職場を求めている人は、これを気に引っ越しを考えてみるのも良いかもしれませんね。
業務内容を曖昧にする
よくあるブラック企業の体験談の一つで、「求人と全く違う仕事をやらされた」という訴えがありますよね。これは絶対有り得ないケースとは言えず、また、ブラック企業でなくとも気付けばそういう状況に追い込まれていた、ということは、誰にでも起こり得るのです。
何故なら、SEは上流から下流まで、幅広い業務を担当する必要があるからです。業務の中には、ユーザーと直接やりとりする機会も多く存在することでしょう。
例えば営業チームから「開発側の発言も欲しい」という要望があれば、商談の場に駆り出されることもありますよね。それが何度も続くと、営業チームと開発チームの境目が曖昧になり、気付けば自分一人で営業に出ていた、ということが起こり得るのです。
会社からの命令を回避するのはなかなか難しいことですが、肝心なのはズルズルと流されず、自分から主導権を取ることです。一度でも営業としての命令を受けてしまうと、それ以降も同じ仕事を回されるのは目に見えているので、自分の本分を忘れないようにしましょう。
見込み残業制度の悪用
求人条件の中でも、給与は最も重要なポイントの一つですよね。自分の人生とスキルを費やして働くわけですから、相応の対価を受け取るのは当然のこと。ここを妥協するなんて以ての外で、自分の安売だけは絶対に避けなくてはなりません。
さて、そんな給与欄には、カッコ書きで「見込み残業○時間」という記載があるケースがあります。これは書かれた時間分の残業を前提とした給与であり、仮に残業を一切しなかった場合でも、その金額を受け取れる、という給与形態です。
こう書くと「じゃあそれ以上の残業は、サービス残業になってしまうのか?」と不安に思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、そんなことはありません。規定時間以上の残業をすれば、その分の賃金は、きっちり受け取ることが可能です。
では何のための制度なのかと言うと、これは財務計算を簡単にするための、言わば会社側の都合によるもので、労働者側が不利になることはないのです。
しかし、ブラック企業の中には、知ってか知らずかこの制度を悪用するケースが少なくありません。さながら「定額残業させ放題」とでも言うように、記載以上の残業代を払わず、搾取しているところもあるのです。
鵜呑みにせず、疑い過ぎず
就活サイトの求人の中には「これだ!」と思う条件が並んでいますが、その全てが正しいとは限りません。フェイク情報を書面から見破るのは非常に困難ですし、本当のことでも、例えば給与○○万円~××万円と書かれていれば、その下限の額になることが大半です。
ですが、かと言って求人情報を疑ってばかりでは、永遠に就職なんて出来ませんよね。
大切なのは、自分の目で確かめること。様々な角度から企業を調べ、面接の場でしっかり職場の雰囲気を感じ取ってみてください。必ず自分が納得する就職が出来るよう、頑張りましょう。