「働き方改革を学ぶ」2回目の今回、取り上げるのは、「有給取得の義務化」についてです。
この項目は「『労働者に有給取得させる義務』を、企業に対して課す」というもので、日本の有給取得率が世界最低クラスであることを、改善するための制度です。
しかし有休は残業とは違い、企業によってルールが異なる微妙なものです。労働者側だけではなく、企業側でさえ、どうすれば良いのか混乱しているのではないでしょうか。
今回は、有休に関する基本的な知識も含め、解説していきましょう。
そもそも有給休暇とは
有給休暇とは、文字通り「お給料が発生する休暇」のことです。
病気療養や冠婚葬祭の時だけではなく、もちろん旅行などプライベートな目的でも使うことが出来ます。労働者が自由に休むことができる制度であり、権利というわけですね。
勘違いされがちですが、有休は正社員の方にだけ発生するものではありません。アルバイトやパートの方々にも付与されますので、忘れないようにしましょう。
企業側は、基本的に有休申請を却下することはできません。
ただし正当な理由、例えば繁忙期に重なるなど事情が有れば、取得時期の変更を労働者側に交渉することができます。
働き方改革における、有給取得義務化の概要
働き方改革における「有休の扱い方」についてざっくりと説明すると、「年間10日間以上の有休が付与された労働者に、年間5日以上の有休を取得させなければならない」という、企業側に課せられた義務です。
前の記事で紹介した「残業時間の上限規制」は中小企業の場合2020年からの施行でしたが、こちらの制度は全企業が2019年04月からの施行となっています。違反すると従業員一人あたり30万円もの罰金になるため、事業者の方は、常に意識しておいた方が良さそうですね。
押さえておくべき4つのポイント
有給休暇を付与する際のルールは法律で決まっていますが、使用の際のルールは企業ごとで異なります。働き方改革を正しく適用するために、企業側、労働者側を問わず、押さえておきたい点をいくつか確認しておきましょう。
1.パート・アルバイトの方も適用の対象
前述のとおり、パートやアルバイトの方も、毎年有休が付与されます。年間10日以上の付与が発生している方は、正社員と同様、有給取得義務化の対象となります。
2.時間休、半休も取得義務の日数としてカウントされる
年間の取得義務の日数には、時間休や半休も、もちろんカウントされます。例えば半休を2回取得した場合、残りの取得義務日数は4日となります。
3.有給取得のスケジュールは、労働者が決める
「有休を取得させる義務」は企業側に発生しますが、その日程を決めるのは労働者側です。企業側が強制してはいけません。
ただし、労働者に有給取得の意思がない場合はその限りではなく、企業が指示することが出来ます。仮に労働者の意思で有休を取得しなかった、という場合でも、企業にはペナルティが課せられてしまいますので、事業者の方は気を付けなければなりません。
4.年末年始や夏休みなど、既存の休日を減らしてはならない
働き方改革の実施以前に定められていた休日を減らしたり、夏休みを有休で賄うように指示することは、「労働条件の不利益変更」に該当するため、企業側が勝手に制度を変えることは出来ません。
ただしこれは、前述の不利益変更に該当するケースのみが対象です。もともと「夏休みは有給で賄うこと」というルールがあった企業の場合は、影響がありません。
問題は有休そのものへの認識の低さ
有休義務化の制度は、企業側の知識と認識の低さが問題になっています。そもそも有休制度に対して、正確な知識を持っていない企業も少なくありません。
極端な例では、労働裁判の場で「うちには有休制度なんてありません」と平然と言い放つ社長もいるというのですから驚きです。
今後しばらくの間は、企業側に悪意がなくても「知らずに法律違反してしまった」というケースも起こりえるのではないでしょうか。
いざという時にトラブルを防ぐため、今回の改革を機に、皆で正しい知識を学んでおきたいものですね。